Back to the Basic!

2002年1月11日

日経BP社 IT Pro 「記者の眼」 2002/01/07 より、抜粋して掲載します。

 「昨年末の休み中,押入れのダンボール箱をひっくり返して何年か前の『日経オープンシステム』誌を読んでみた。ちょっと思うところがあって,『プロフェッショナル,仕事を語る』というコーナーをもう一度読みたくなったからである。

 年の瀬に郷愁にひたりたくなったわけでもないのだが,あらためて読み直してみると,立場や表現の違いはあれ,多くのプロフェッショナルの方々が同様のことをおっしゃっていたような気がする。「Back to the Basic! 基本を大切に! 自分の根っこがどこにあるかを考えよう,それがはっきりしていれば,世の中がどう動いても,そんなにうろたえることはないでしょう?」――

 あるデータベースの専門家は,それをこんな言葉で表現してくれていた。「汎用機だろうがUNIXマシンだろうがパソコンだろうが,CPUやメモリーとディスクがあって,みたいな基本は変わりませんよね。しょせんはノイマン型のコンピュータなんだから。やっぱり最後はコンピュータってどう動いているんだ,という原理原則を分かっている人が強い」

 Linuxのコミュニティで著名な開発者が,もとは汎用機のSEであり,今でも事務処理ではCOBOLが一番だと考えてシステムを作っている,という話を聞いたときも新鮮な驚きがあった。インターネットであるとかオープン・ソースであるとかERPだとか,世の中は新しいトレンドが登場するたびに,あたかも大革命が起こったようにはやしたてるものだ。まるで,今までの常識が全く通用しなくなってしまうかのように。だが,プロフェッショナルの根っこにあるものは,そんなに簡単にうつろうものではないのだろう。そんなことを考えさせられたのを覚えている。

 ユーザー企業の情報システム部門に籍を置くSEが,「ITそのものの知識についてはどうしてもベンダーのSEやコンサルタントにはかなわない」と悩みながら,「自社の業務や組織を把握して最適なITを考えること,あるいはITを活用して自社の業務や組織を変えていくことができるのは自分たちしかいない」,と仕事へのプライドを語ってくれたのも印象的だった。

 基本にもどる,ということは,決して後ろ向きのことではない。前に進むためにはまず基本を固めよう。プロとしての自分のよりどころをしっかり持とう。新しい技術を次々に取り入れられる人ほど,基本をしっかり固めているものだ――。ごくごく当たり前のことではあるのだけれど,古いダンボール箱をひっくり返したのは,それをもう一度確認したかったからである。」
(井上 望=IT Pro編集長)